2011
08.29

柳澤美晴『一匙の海』を読む

発刊されたばかりの、柳澤美晴さんの第1歌集『一匙の海』が

とても素敵でしたのでぜひご紹介したいと思います。


hitosaji.jpg
本阿弥書店




柳澤さんは北海道旭川市生まれ。

第19回歌壇賞を受賞された経歴のほか、

北の地で「アークの会」を結成され、研鑽されています。


歌は、ときどき言葉が過剰ぎみの部分もありますが、

痛々しくも青春の葛藤が綴られていて、

わたしはとても心に残りました。



歌集全体に通底しているのは「分かりあうということ」。

自分と周囲。父と。恋人と。職場の同僚と。職場の生徒達と。

そして世界と。

作者はさまざまな形で分かり合おうとするために

ある時は傷つき、ある時は苦しむ。

その心が痛々しい言葉で綴られていきます。




前髪の触れあわぬ距離にきみはいて無菌操作のあやうさを言う

眼裏にあふれる虹を告げたくて告げられぬまま抱きあうばかり

バラ線にからむ昼顔かなしみを打ち明けられる友の少なさ

刺繍針ざむざむとわが内をゆきどこからどこまでがきみだろう

すりむいたこころのままに逢いたいと親指で打つRe:メール





作者はわかり合おうとして、たぶん喜びよりも

苦しさをより多く感じてきたのではないか。

でもそれでもすべてに対してわかり合おうとする。

そのまぎれなく真摯な生の姿勢は

読む者の胸に迫るものだと思います。



歌集の終章にむけて、作者の、対象を見る目は

徐々に穏やかになっていくように思え、

それも読む者にはほっとすることです。



オバサンになってしまったわたしは

この歌集の言葉ひとつひとつがとても眩しかった・・





もっと読みこんでみたいと思う歌集。

久しぶりに出会った感じです。






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