2012
05.31

永井祐さんの『日本の中でたのしく暮らす』を読む

永井祐さん、待望の第一歌集がついに刊行されました。
『日本の中でたのしく暮らす』(bookpark)

永い




http://www.bookpark.ne.jp/cm/contentdetail.asp?review=off&content_id=UTNH00037


これほど待たれていた歌集があったのかなぁと思う一方で、
これまでの永井さんの歌作をまとめて読むことができるのはこれが初めてというのは
なんだか不思議な気持ちがしました。

詩客で書こうかどうしようか、と思っているうちに、締め切りがきてしまい
書いていませんが、こちらで少し書こうと思う。

私は永井さんの立ち位置から、一番遠くにいる人間だと思う。
永井さんの歌評にはすでにいろいろなコンテクストがあって、
それをあまりふまえていない自分のこの読み方には大いに自信がない、
ですので率直に。

案外、この人はオーソドックスな人かもしれないと思いました。
ただし、プラスアルファとして、現代的な倦怠感を伴って。


歌集のタイトルにもなっているけれど、
彼は常に、属性を気にしている。

日本という枠組み、品川区という枠組み、
友達というコミュニティの枠組み、


日本の中でたのしく暮らす 道ばたでぐちゃぐちゃの雪に手を差し入れる

テレビみながらメールするメールするぼくをつつんでいる品川区



それらのなかで、非常に一般的に、平凡に過ごすために
とてもエネルギーを費やしている、費やして疲れている。

「たのしく暮らす」のはこの人にとって義務であり、労働だから
割り切って、やっている。
割り切れば消耗しないか、消耗しても少なくてすむもしれないから。


元気でねと本気で言ったらその言葉が届いた感じに笑ってくれた

人のために命をかける準備するぼくはスイカにお金を入れて

あの人と仲良くなってこの人と仲良くならない 頭つかれた

月を見つけて月いいよねと君が言う ぼくはこっちだからじゃあまたね




友人と心底親しくなると言うのは、自分をさらけ出し、消耗するリスクを負うことであり、
彼はそのやり方になじまない。だから義務としてとりあえず友達とつきあう。


本当はとても美しくてはかないものが好きなのに、
それは言わない。一人の時にこっそりと殻から角を出す生き物のように
自分自身をだす。


アスファルトの感じがよくて撮ってみる もう一度  つま先を入れてみる


この倦怠感は、あるいは「生きる苦」なのではないかなと思いました。
とすれば、永井さんの文体は、今若い人の歌が「私性」から離れた歌とともに
さかんに論じられているけれど、
とっても濃い「私」を描いているのではないかと・・・



わたしの読みのほかにはやくどなたかが書かれた批評が読んでみたいです。


刊行はブックパークよりのオンデマンド。
ご刊行を心よりお祝い申し上げます。
ぜひご一読をおすすめします。


http://www.bookpark.ne.jp/cm/contentdetail.asp?review=off&content_id=UTNH00037
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