2013
06.07

三原由起子歌集『ふるさとは赤』を読む。

日月に所属する三原由起子さんの第一歌集『ふるさとは赤』を読みました。
三原さんは福島・浪江町出身で、短歌だけではなく、
多方面で活躍されているアーティストです。三原さんにお会いするとパワフルな勢いに
うつむいていても前を向く力をもらえるような不思議な力をもった方です。
そんな三原さんの処女歌集です。


人生のそのときそのときを率直に見つめた歌が印象的です。
ほぼ時系列に配置し、作者がなにを考え、どう生きてきたのかが如実に感じ取れる。
非常に率直で直情、ですが、情が厚い詠風でぐいぐい読み手を引き込んでいきます。



愛したい人には他の誰かいて恋の不等式などをおもう

どたばたとした花嫁の体験談を読んでいたのにどたばたとする

コマーシャルソングに決定したという文字の輝きぬ朝のメールに




恋、自身の結婚、アーティストとしての第一歩の報せ。
そんなあれこれを内包して順調に進んでいた日常が、あの震災の日から一変する。
彼女は自らを育んできた浪江について、きりきりと対峙すること、再考することを余儀なくされ、
そして誰よりもふかく考えていく。


iPad片手に震度を探る人の肩越しに見るふるさとは 赤

いま声をあげねばならん ふるさとを失うわれの生きがいとして

東京生まれ東京育ちの人は言う君のふるさとは貧しかったと

「原発さえなければ」という台詞には収まりきれない現実を見る




後半はその思考の軌跡なのだけど、後半を読んでから、
さらに戻って震災前の前半部分を読むと違ったことを考えさせられる。

一人の若者の日常や生を育んでいた故郷が原発事故で壊されてしまったこと。

そしてうら若い彼女に今、なぜ、ここまで考えさせているのか。

ともに考えなくてはならない、
このままにしていてはいけないという
覚悟を読み手にも興させる力をもつ歌集だと思う。


2年が過ぎて、おそらく関係のない人には
もう関係がなくなっている震災と原発事故。


重い内容だから・・と回避しがちな人に。


ぜひ読んで頂きたい歌集です





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