2013
10.27

『中東短歌2』を読む。

待ち遠しかった、『中東短歌2』。

ご厚情により一足先に読めることを改めてありがたく、
この場をお借りして御礼申し上げたいと思います。

2号目は俳人の青山茂根さん、
短編作家アブドゥルカリームさんを加えての刊行で、
前号よりもさらに充実の内容と感じました。

歌は中東ならではの題材に依って、
それぞれがその人らしい歌を詠んでいるように感じました。

一般小売り前とのことですので、内容のご紹介は簡潔にしたい。

ノアの子のセムの言葉を学びいき その間三島由紀夫が死にき  三井修

唇の乾きに冬を知ることが、手紙はここで二枚目へ行く     千種創一

ひらかれた彼女の白いてのひらに月は照り、やがて湾岸に照る  齋藤芳生

こちらでも平気で車道を横切って担架の上に載せられる夢    幸端

醒めてまた眠れるまでの通路にておほきなくらき驢馬の死にたり 町川匙

アーモンドの花咲く町へ恋しさを先に行かせて少し遅れる    柴田瞳

オリーブの葉裏は鈍い剣のいろ 反権力を言へば文化人かよ   

わたくしと熱砂を分かつべく扉                青山茂根

マニキュアも指輪もなくて指涼し               市川きつね



「オリーブの」の歌はアノニマス氏(匿名)作。
今号で特に感じたのは、今の作者の立ち位置が色濃いということで、
現在は中東から離れた位置に居る作者の作品がとてもいいなあと思って読みました。


これでもかとちりばめられる異国情趣は、それはそれで珍しくもあるけれど、
(今は誰でも渡航経験は多少なりともあるし、中東が珍しいわけでもない)
その特異性はすぐ飽食に至ってしまうファクターなのである。
やはり人間の生の普遍性が描かれている作品こそ
胸に深く入ってくるのではないかな、と思います。

匿名氏の連作は、この誌の中で比較的大きな分量を占めていて、
作中のモティーフも非常に「中東的」な雰囲気を醸しているのだけれど、
それはひとつの条件に過ぎない、
描かれているのはぎりぎりのところで生きる人間の姿と
その生の悔しみ、かなしみ、のようなものに深く感じるところがありました。

もちろん、コロンブスの卵みたいに
そういう環境があるからこそ、
ぎりぎりの生に接しているということなのだけれど。。
でも、中東という特異性が作品全てを司っているのではないと思います。

けれども、匿名ということがひっかかる。
もし、中東に行っていない人間でも
本やら映画やら、中東っぽい単語を習得した上に
精緻に虚構化して作品にしたとしても分からないような気もします。
匿名とはなかなか読み手に大きな疑問を投げかけるものだなぁと改めて思いました。


「三号で終わります」と宣言されていた「中東短歌」。
企画もの同人誌が増えてゆく中で、この誌はどんな道筋を残すだろう。
中東短歌たるゆえんを、更に3号に期待しつつ・・

『中東短歌2』は
11月の文学フリーマーケットで一般販売されるとのこと、
紀伊國屋書店グランフロント大阪店での販売は11/15まで
とのことでした。

いろいろな読み手にいろいろ感じて欲しいなぁと思った誌です