2014
10.19

嵯峨直樹歌集『半地下』を読む

未来短歌会に所属する嵯峨直樹さんの第二歌集『半地下』が刊行されました。
第一歌集『神の翼』から6年あまり。
刊行を待望されていたファンも多かったのではないでしょうか。
わたしもその一人です。

身めぐりの人々、事象を感覚を鋭敏にして捉え、言語化していく
過程で、さまざまな表現への挑戦が試みられている。
美しくも挑戦的な歌集だと感じました。

誰彼の余熱ばかりの小部屋たちそのひと部屋に冬陽はとどく

透明な傘ひろげればアルミの骨外れかかって秋のこの国

日常が猛スピードで過ぎて行く今日は二人は半地下にいる

憎悪とは完璧な愛 対岸の私と銃を撃ち合う遊び

あたたかな乳房に耳を圧しつけて寝ている人の心音を聴く


とりわけ際だつのが、とても身近にいる人(配偶者?)への観察である。
愛はあるが、愛は長い間を経て少しずつ変容している。
その変容を凝視して、愛のかたちを感覚作用を使って描き出す。
深い湿りの、陰翳の、ぬめりを帯びた愛の関係。
タイトルの「半地下」という立ち位置、位置付けが、くっと賦に落ちる瞬間がある。

脳の奥底、生理の源に届いてくるような歌集です。 
ここまで感覚の奥処に届く短歌はなかったのでないか。
ぜひ一読をお勧めしたいと思います。