2016
01.17

1月に思うこと・同人誌『Es』終刊

Category: 思フコト
加藤英彦氏を編集・発行人とする同人誌『Es』が、2015年11月号をもって終刊した。
最終号の誌名は『Es蝶を放つ』である。



2001年5月に創刊以来、15年30冊にわたって、
加藤氏はじめ同人に江田浩司氏、山田消児氏らを要し、
毎号、現代短歌の抱える様々な問題を、それぞれの同人らが持ち前の鋭利さを生かして
さまざまな角度から鋭く掘り下げて論考されていた誌であった。

筆者は恥ずかしいくらいほんの後期からの読者ではあるけれど、
この誌のもつ力強さと鋭さに幾度も読み直してはメモをとったり考えたり、
自分のなかのもやもやがあたらかに晴れるヒントをいただいたり
豊かに多くを考える時間をもらった誌であったように思う。

「本号をもって、同人誌Esを終刊する。
創刊以来、他ジャンルに越境し、毎号誌名を変える不安定さをむしろ是としてきた。
一冊ごとの変化をこそ大切にしたいと思ったからである。」

編集後記にはこの言葉がある。最終号までこの視座は失われていない。
今号も、特集「現代短歌の先へ」として各同人が渾身の作品群を展開している。

例えば、『Es』が創刊された2001年、ネットではウィキペディアが開始され、
9月には米国では同時多発テロ事件が起きている。
ネットで何でも調べられ、答えが提示されることで、自ら考えること自体から遠ざかり、
世界はある一方向へどっと傾れてしまう体質を携えてしまったのではないか。

同人誌の発行はこの間、
文学フリマの開催(2002年~)などもあって年々活況を呈しているが、
多くは親睦も兼ねて娯楽性を重視したものが多いように感じられる。
(あるいは、文学フリマという「場」には、堅い内容ではなく、
娯楽・エンターテイメント性を備える誌、
手にとってただちに楽しくなる誌のほうがむしろ適応するのかもしれない。)

『Es』誌のように本格的な論考誌はこれまでにごくごく少数の歌人たちが
取り組んでいるのみであり、入手経路も限定されていて、
多くの人が手にし、読むという行為までたどり着ける手立てが確立されていない。
その点では、『Es』誌はamazonでの販売など、
入手方法にも簡便さを備えていた。

はたして、某かの誌が送り出される「場」の変容と、「場」が含有するやさしげな力は
一方向へ傾れる勢いにも異議の杭をうちたてることを不可能にしてしまった。
そして今、である。

「稀少な存在」としての『Es』誌終刊とともに
時流に対して、いったん立ち止まり、問いかける言葉を持つひとびとが絶滅していく流れに
筆者は危惧を抱く。
後継誌の誕生を切に望むとともに、
筆者自身も個人誌を発行する者としてなにが出来るのか、
見つけ、そして努力していきたいと改めて考える。