2013
06.01

田中教子歌集『中つ國より』を読む


新アララギの田中教子さんの第3歌集となる『中つ國より』を読みました。

手のひらサイズで、両手にすっぽりと収まる
かたちは、いつでもそばに置いて読むことの出来る親しみがあります。


「Ⅰ海の國より」
「Ⅱ 中つ國より」
「Ⅲ 黄泉の國より」
「Ⅳ 杜の國より」
「Ⅴ古國より」

と五つの章が収められていて、読み手はその國を小舟でまわるように読み進めていきます。
感じられたのは、

よるべなき絶対的な寂しさと原不安でした。
不安といってもふらふらと頼りないのではなく、
もうずっと前から不安は非常に親しみ深いものとして作者のそばにあります。

自らの身体についての不安、歩んでゆくべき未来についての不安、
だれか支えてくれるべき者はいないものか。激しい思慕のような欲求があります。


空と海とけあうあわいながれくる雪の故郷があるかと思う

どのように読んでも返事のない雲は朝の息子のようなり おーい

夢の中に見知らぬ少年あらわれて桃の実ひとつ我にくれたり

胃の中に日没があり陸橋を泣きながらゆく子供が一人

塩壺に水湧くようなさみしき日島影は父海原は母



本当にかわいがり思いやってくれる父母はすでに亡く
(こんなときどうしたら・・)という少ない迷いのときでさえ、頼る者がない、
そんな中で作者は空を見たいと願う。空を飛びたいのではなく、見るだけ。
そんな小さな願いを大切に胸にしまっている。




ぜひ多くの方に読んでほしいと思いました。


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