2013
06.05

大森静佳歌集『てのひらを燃やす』を読む

第五十六回角川短歌賞受賞の大森静佳さんの第一歌集。
さきの山崎さんと同年の新人賞受賞者で、
今年は女性歌人の歌集が豊穣な年ではないかなとひそかに感じています。
〈去年は男性歌人の歌集刊行が豊穣な年でした。〉

大森さんの歌はとにかく、短歌の良さを十二分に発揮していること。
定型、喩、一首の構成など、オーソドックスに詠まれている。
とても勉強されている人なのだと感じます。
具体+喩、喩+具体  など。
ただ、型にはまりすぎているのも
ちょっと気になるところで、もっと自由でもいいのかな、と思ったりもしました。


ふるさとへ君連れてゆく三月よ改札は雨に濡れない場所だ

感情がわたしのからだの芯だった 白木蓮の長く散る春

自慰というさびしさ知らず知らされず麦茶の瓶を倒して冷やす

雨を映すたび老いてゆく眼でしょうか駅のベンチの背に傘を掛け

からめれば切符のような冷たさの舌だったんだ だったんだ 冬


相聞でまとめた一冊。
「あなた」という対象について深く考察し、次第に「わたし」は変わっていく・・
安定した技巧。年齢よりも大人びて見えるようなしっかりとした歌です。

この人は対象をどう捉えているか、考察したものを表現に出す人なのだと感じます。
〈~だ〉〈だつたのだ〉〈だった〉という口語的な言い切りのかたちが随所にみられ、
対象への解釈を提示している。それは言い換えれば自己の世界が揺るぎないということで、
強さを醸すことにもつながる。

文体はすでに完成していると思う。
今回は主に「あなた」(自分の心を占める、大きな他者)との関係性に重点が
置かれていましたが、この人が社会を詠うとき、どんなふうかなとも思いました。



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