2010
10.18

斎藤芳生歌集『桃花水を待つ』

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第53回角川短歌賞を受賞された

斎藤芳生さんの第1歌集。



阿武隈川の岸辺、

福島市に生まれ育った斎藤さんの

ふるさとを見る眼差しはどこまでもやさしく、


長じてのち、ふるさとから

砂漠のはて、アブダビに日本語教師として

渡り、過ごした日々が

すがすがしい雰囲気で綴られています。




海外経験を詠んだ歌が何かと取り上げられるのは

どこの紙面でもみかけますが、

それにも増して、

わたしは斎藤さんのふるさとを見つめる視点の優しさに

驚かされるのです。



福島花見山公園 /


摘果作業の始まる朝よ春なればふるさとは桃花水にふくるる


蛇行する川の濁りに守られて私の帰途があるということ


銅版画家に削り取られし東北の雪はたちまちにとけてしまえり


残雪は兎のかたち春まだき吾妻小富士を飛び越えて消ゆ





自分を育んだふるさとを慈しみ、愛する眼差しがあってこそ、

外国に行っても己を見失わず、

彼の地も愛することができたのではないか。



Abu Dhabi / muness




Abu Dhabiは蠍のかたちおおらかに抱かるる海はひたすらに凪ぐ


薄衣のさやさやとしてアラビアの妻たちが我の恋を見ている


どうにもこうにも怒り激しき太陽を抱きしめて凪ぐ海は暮れゆく


満月の海に抱きしめられに行く 君の眠りに間に合うように







斎藤さんのゆたかな心映えと

たゆたうような文体に

読み手もまたゆったりとした心持ちになって

ひとときを過ごすことができるでしょう。



ただいまは帰国されておられる斎藤さん。

これからその眼差しで何をみつめてゆくのか

わたしはとても待ち遠しいのです。

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