2013
09.20

浦河奈々歌集『サフランと釣鐘』を読む。

かりんに所属する浦河奈々さんの第二歌集『サフランと釣鐘』を読みました。

浦河さんの歌の特徴は、ほの暗く繊細な把握にあると思います。
また頻回に登場する植物の描写は、ひんやりと湿った感じの質感を醸している。
湿った感じといっても感情的でウェットという意味ではなく、そういう意味では
非常に冷静で抑制されている。
読み手は信頼して託して読み進めることができます。

画のなかの森を脱ければ土手の夜、ひらめく雷をみし記憶あり    「小兎」

つはぶきの黄色く咲ける産婦人科の横を歩いて花活けに行く     「つはぶき」

感情のうごめく怖さ堪へかね人はかぼちやと念ずるわれは      「釣鐘」

白鳥にやどれる神の長き首ぬうつと吾に向く(おまへは女か)    「釣鐘」

死のやうな蜜のやうなる紅に痺れて歩む満天星の道         「メヒシバうたふ」


集中、母君の死があるのですが、弱ってゆく母君の様子とあいまって
自らの母性とか、あるいは女性性というものについての考察が非常に深まってゆく。
母と子、老いた一人の女性と、近しくも遠いかも知れない位置にある自分ということ。
具体的には、子を持つということについて、作者は非常に考えておられ、
悩み、もだえているのです。そうして一個の女性として自らを掴んでゆくような。。。


抑制された描写のなかに、
繰り返し自己への問いが描かれているように思います。



何度も読み、さらに理解を深めてゆきたい、大切にしたい歌集です





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