2010
11.01

中根誠歌集 「境界」(ながらみ書房) 

絵本美術館ほか 022


茨城県在住、「まひる野」に所属している

中根誠さんの第4歌集です。




歌集の題名「境界」とは、民俗学上の用語(敷居Schwelle)シュヴェレ

からとられており、

この場合の「境界」は線でなく、領域を言うのだそうです。


「人間が境界をつくるのではなく、境界の異常さが普通の人間を

 異人に変えるのである」(あとがき)

とあるように、

「境界」は、現在のわたしたちの生活の到る処に存在し得る、と作者は言います。


人を狂気へと駆り立てる境界。

人を幸福に育む境界。

中根さんはそれらを丹念に観察しています。


夢あらぬ午睡ののちに見る海の刃の上をゆく春のフェリーは


ハワイいまも軍事基地にてゆらゆらとブーゲンビリアの咲きて散らざる


一両を切り離しては走り去る車両、切り離さるるごとくに


紅色の氷菓の甘さかなしまむ自死も戦死も集計されて


明日はさらに暑いでせうと伝へゐる天気予報士よ感情を出せ


自殺者として老い人を殺めたる列車が止まりをる秋の野や



 
巻末にある「境界」の連作は、

朝鮮半島の南北境界線・非武装地帯に目を向け、

その土地の存在する意義について、深い考察を加えています。




統一後は自然公園にするといふ提案、非武装地帯夏なり

おのづから山と川とが分けし土地人が奪りあふ 境界なる業




作者の、鋭く現世を見つめる視点は

いたるところに点在する「境界」を見抜き、

また自在にその上を逍遙しているようです。








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