2014
11.01

服部真里子歌集『行け広野へと』を読む

第二十四回歌壇賞受賞者である、
服部真里子さんの第一歌集『行け広野へと』を読みました。
装幀も素敵で名久井直子さんによる。
まさに新進気鋭、頁を繰るとすばらしく豊かな詩性にとたんに引き込まれます。


雪の日の観音開きの窓を開けあなたは誰へ放たれた鳥

はつなつの光よ蝶の飲む水にあふれかえって苦しんでいる

どの町にも海抜がありわたくしが選ばずに来たすべてのものよ

海を見よ その平らかさたよりなさ 僕はかたちを持ってしまった

冬の火事と聞いてそれぞれ思い描く冬のずれから色紙が散る



助詞「~よ」が多い。呼びかけや強意の命令の用法のとき他者へ働きかける強さを、
詠嘆ならば強い感動を、それぞれ歌に付加しています。
歌の力強さ、世界を支える柱の強さは、
助詞の使い方からも感じました。 
対象をみて、それをそれとして認識するときに、
個々に異相があること、挙げた歌のなかには、複数の対象が表されています。

とらえどころのない「あなた」
あふれかえる水。
どの町にもそれぞれの海抜があること。
海とちがって、固有なかたちをもってしまった僕。
冬の火事のイメージ。
それぞれが異なること、そして見過ごしてしまいそうな異相に気づくこと。


服部さんは同人誌や、朗読や、多くの場で活躍しておられ、
その経験がたとえば五首目の「色紙が散る」ように、ゆたかな色彩を蓄えていくのかもしれない。
独特の詩的な世界観をもっと読みたいなあと思う歌集です






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