2014
12.08

本田一弘歌集『磐梯』を読む

心の花に所属する本田一弘さんの第三歌集『磐梯』。
福島・会津という土地から、
震災と原発事故によって変貌した故郷と、
人々の生きる姿を詠んでいます。

歌は時系列で並べられ、震災から最近までの作者自身の思いが
痛切につづられている。
本田さんは会津へと逐われてきた同胞であり、また被災者あである人たちの姿を見つめる。
自らの傷みよりも、被災したそれらの人たちにあくまでも寄り添う。
そんな人間としてのあたたかみが一首ずつから伝わってくるように思います。

一年がもう経つたのか 三月の忌日を雪とわれと鳴き居り

仮置き場決まらぬままに春鳥のこゑのさまよふカリカリオキバ

学校は大きなる沼 九十の少きいろくづ自由に泳げ

青布に覆はれてゐるふくしまの真土の息嘯きこえけらずや

モニタリングポスト埋もるる雪の朝われと生徒と白き息吐く



郷土をこんな姿にしてしまったものへの怒り、さまよう生者へ、
そして死者へ注ぐ鎮魂のまなざしは
そのまま会津の地に静かに大きく立つ磐梯山のようでもある。

他者への視点の歌が多い代わりに、自らを詠う歌は少ない。
それほどに会津という、一番福島でも遠い地にあっても
身めぐりは変貌してしまったのだと思う。

もっと早い時期の刊行だと
今年末のもろもろの総合誌のアンケートなどにも間に合ったのではないか
と思われるのですが、
そういう下心の全くないのが作者らしい誠実さだと思います。


大きく心打たれる歌集です。






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