2015
07.14

土岐友浩歌集『Bootleg』を読む

「新鋭短歌シリーズ」の第22巻目となる、土岐友浩さんの第一歌集『Bootleg』。

あまやかな感性と所在ない雰囲気が口語に載ってみずみずしい歌集になっている。

土岐さんはすでにweb上で短歌作品集『Blueberry Field』を発表していて、
この『Bootleg』はその後の作品を収めた作品集であるという。
だからなのか、とても慣れている感じで、安定した雰囲気が巻末までゆるがない。
『Blueberry Field』には相聞もあって、併せて読むといっそう『Bootleg』の相聞歌が深く読めるだろうと思う。



ぴったりの場所はどこにもないけれど海の浅瀬をあなたは歩く

生活というのはわからないけれどあなたと水をわかち合うこと

やり方は知らないけれど春先のゲートボールをころがるひかり

ゆっくりと時は流れているけれどなにもできそうにない雨の日

少年の世界のすべてではないが秋の野山が近づいてくる



たとえば東さんは解説で「~ない」という構文の存在を指摘しておられたが、
「~ない」「~けれど・が」の文体が少し頻回ぎみにでてくるので目についてしまう。

だが、打ち消してからはじまる主体の視点は、おそらくとりまく世界への小さな捉えなおしなのだ。
良く見ること、いったんは既出を打ち消してみること、そこから新しい世界を見出すこと。
その提示が読者にみずみずしい世界の拡がりを呼んでくる。
「新鋭短歌シリーズ」も円熟の季なのか、このような歌人を迎えたのだと思う。







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