2016
07.05

森垣岳歌集『遺伝子の舟』を読む

第2回現代短歌社賞を受賞した、森垣岳さんの第一歌集『遺伝子の舟』。
家族や小さないのちを鋭く、丁寧に見つめます。
視点はいずれもあたたかで明るい。

家族関係やいのちの歌も非常に難しい問題を孕んでいるのにもかかわらず、
明るさを含むために、決してウェットで悲惨な感じに鳴らず、
かえってドライな寂しさや虚脱感も含むような気がします。

発芽した胡瓜の青き葉に触れてまことのごとき嘘を説きおり

アスファルトの窪みに水の溜まりいて何の命も育まずおり

ふるさとの家の扉の向こうには見知らぬ父の空間がある

未分化の細胞あるいはひとひらの雲を好みし本当の母

遺伝子の舟と呼ばれし肉体を今日も日暮れて湯船に浸す



バイオの世界のなかで、自分のルーツ、存在といったものまで踏み込んで考えていきます。
跋文にはヤママユの田中教子さんの丁寧な解説がついています。
魅力をあますところなく解き明かす解説を読みつつ読むというのも楽しさがあります。

新しい家族を得て、新しい歩みをはじめた森垣さん。
この歌集以降、どんな作品世界を築いていくのか、とても楽しみです。







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