2011
08.15

宇野常寛『リトル・ピープルの時代』を読む




宇野常寛氏の書き下ろし新刊が7月末日に発刊されました。

表紙のインパクトもさることながら、同世代の批評家として

震災後「待っていた」とも思える発刊。

ネタバレにならないように雑感を少し。





震災後、著者がまず想起したのは村上春樹氏の著作だったと言います。

その最新刊ともいえる、『1Q84』の分析から

著者の主張する、「ビッグブラザー」と「リトルピープル」の

関係性から社会をひもといていくわけですが、

村上春樹氏の『1Q84』にはG・オーウェルの『1984』が

色濃く反映していたわけで、

宇野氏はそのコンテクストにふれる余地を持っていないように感じました。



本書の冒頭が長く村上春樹論的な面持ちなために、

インパクトのあった、表紙の仮面ライダーとか、

お得意のサブカル論からみた世界論は

ひっそりと次章以降に記されています。

それはとても興味深いものですが。



実を言うと、私が宇野氏の真骨頂ではないかと思ったのが、

最後の方の「補論」の三つであり、

なぜ、「補論」という構成にしてしまったのか、

「補論」というと補足なので。

論考に補足がついてしまうと、

その論考はあれれ、いい足りなかったんですね、

と思ってしまうくらいのものになってします。


一番自在に筆を進めているように感じた

「補論」を、第5章にして、

もう少し深化していったらよかったのではと感じました。



ただ、宇野氏は『ゼロ年代の想像力』でもじわじわと話題になっていった

タイプの著作傾向ですから、

この著書も少し時間がかかって読み解かれていくのかもしれません。


批評好きにはおすすめの一冊です。









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