2012
08.27

田村元歌集『北二十二条西七丁目』を読む

りとむ所属・田村元さんの第一歌集となる『北二十二条西七丁目』が刊行されました。

田村さんは歌壇賞を受賞してから十年後の歌集出版となります。

おおよそ新人賞受賞者は数年のうちに歌集を出版する方が多いのですが、

田村さんは満を持して、という感じ。

とても待たれていた歌集。


穏やかに事象を見つめながら、その事象をとおして、

自らの生き方を照射してゆくような歌群。


ささやかな抵抗として滑り台逆さに登りて帰り来たれり

水槽に舶来のメダカ覗くとき街の四方を風が区切れり



歌集の前半から。


ある具体の焦点を絞った視点から一気に大きな視野へと拡がる詠み方で、

一首のうちに広さを持っています。

 
投げられし書類拾はんと屈むときある油絵のひとつが浮かぶ
足下のアスファルトから春は来てわれはねばねば駅へと歩む

酒なしでやつてゐられる人たちを横目にくぐる黄の暖簾かな



後半の就職されてからの歌。

組織の中で働く一粒としての悲哀や理不尽さをぐっとかみ殺して生きてゆくような、

抑圧された歌が目を惹きます。

そうした抑圧の日々の中にあっても田村さんの詩情は

いっそう歌に陰影を与えています。

ひとしきり普通列車は立ち止まる桜咲く駅にドアを開いて

いつまでも俺は川だと言ひながら渡良瀬川が夜をさえぎる

疲れたら野菜売り場にやつて来て色とりどりを眺めたらいい



家庭を持たれてからは力がふっと抜けたような、
ゆるやかな感じのに遷移していきます。



十年の間に、田村元という一人の男性が何を考え、どう生きてきたのか。
生の厚みそのものが歌集に凝縮されているように感じられました。








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