2012
08.27

近藤かすみ歌集『雲ケ畑まで』を読む

短歌人所属の近藤かすみさん。
近藤さんは優れた評論を折々に発表しておられ、論客というイメージが強かったのですが、

歌集を読んでまた印象が深く、広くなりました。


空虚感。歌集にはその雰囲気が濃く漂っています。

お子さんも既に懐から飛び立たれ、夫とも物理的精神的に距離がある人生の時期。

すべてははるかな時間のなかに自分とは違う流れで流れているようなさびしさがあります。


はじめから寡黙なひとと知つてゐた夕餉のあとに梨の実を剥く



夫を詠んだ歌。

作者はなにか話したいことがあってもかみ合わないし、

自分が期待する答えももらえそうにない、といったようなさびしさがあります。

そのさびしさが透明で白い果実の梨をさりさりと剥いていく動作の描写に

凝縮されていくように感じられました。



手すさびに銀紙で折るだまし舟だれも使はぬ灰皿に燃す



銀紙で小さなだまし舟を折るという動作。
わたし個人は『ブレードランナー』を思い出しました。
記憶の鍵となるかたちを小さな紙で折る。


決して折り紙のように大きくはなく、

繊細な美しさを感じさせます。だが燃やすという、灰になる寂しさ。

その行為に作者の思いが込められていて、空虚な感じがしました。



白日傘さして私を捨てにゆく とつぴんぱらりと雲ヶ畑まで

みづからを律して生きて何とせう渋柿ほろほろ干し柿となる




からんとひとりでいるとき、読みたい歌集です。








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