2012
12.26

瀬戸夏子さん歌集『そのなかに心臓をつくって住みなさい』を読む

若手歌人として活躍中の瀬戸夏子さんの歌集

『そのなかに心臓をつくって住みなさい』を読みました。

ベーバーバックを意識したポップな装幀がすてきです。
(ごめんなさい。書影アップの時間がないのです。おゆるしください。)

第一歌集となるこの歌集は不思議な言語空間に彩られ、
歌もまた詩であることをつよく認識させられます。

詩も同時に収められているので詩歌集といってもいいかもしれません。


わたしがとても好きだったのは「愛国婦人会」章。

逆説の言葉を一首のなかに併置することによって
合わせ鏡にするように無限の感覚が広がってゆきます。


水の中のきみの中の夢がみつける みんな気をつかって言わないけれど

性欲が目薬のように落ちてきてかみなりのそらいっぱいの自殺がみえる





たとえばこんな歌は。主格の助詞「が」や所有の助詞「の」の使い方がとくに印象的です。

一首目、「きみが」みつけるのではなく、「水の中のきみの中の夢」がみつけるのだという。


ウェットな質感の確信は、かなり他者を気遣っている風で、

傷つきやすい他者とのつながりを象徴しているように思えました。



掲出の二首目、性欲は少しずつ上から落ちてくる目薬のようなだけれど、

確信として目に必ずはいるわけではなく、だが薬効は持っているのです。

自死が蔓延していることが見えてくるという。痛みを表現している歌だと感じました。




この歌には、前の一連に


めぐすりに似て高速のかみなりも胸の外へとひろがる花瓶【マイ・フェイバリット・ヘイトスピーチ】



があって、めぐすりとかみなりの類似相を見つつ、さらに自らの身体感覚を花瓶とからめる。


難解な暗示から、読者を選ぶような気がしますが、ても楽しい一冊でした。




あとすこしだけ、老婆心から。

瀬戸さんのこの歌集は非常にポップでカジュアルで、インディーズ・レーベルみたいに

とっても希少価値があってマニアック。

ふるーい歌壇の中にいるわたしからすると、非常に自由度が高くて、まぶしいばかりなのですが、

今後、詩をやりたいのか、歌をやりたいのか、という方向性が混沌としているということ、

第一歌集として認知されるにあたって、もっと華々しく流通させたら(おきまりの歌壇的「謹呈」ふくむ)

良かったのではないかなぁと思うのですけれど・・



フリマ等で売るのもありかと思いますが、それだけではもったいないと思います。

希有ともいえる、不思議な言語感覚をもつと多くの人に読んでもらって認知されるべきと思いました





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