2017
06.05

大松達知氏歌集『ぶどうのことば』

第4歌集「ゆりかごのうた」で牧水賞を受賞された
大松達知さんの最新歌集『ぶどうのことば』が刊行されました。

前歌集が育児の歌に占められていたのに比して、
本歌集は、教師として、父親として、夫としての何気ない日常に
題材を求めておられます。


おやすみを言はずに妻が寝てしまふ家族三人になつたころから

いちにちの心の疵によく効いて手足ぬくめるお湯割りの芋

不作法を新しいねと言ひかへて高校生に迎合すこし

妻の機嫌、娘の機嫌とりましてわれの機嫌は<白霧島>がとる

つきつめて思へば人と暮らすとは人の機嫌と暮らすことなり


家庭を持つこと、そのなかでの「相手」との関係性が
子を持つこと、子が育つことで見え方が変わってくる。
仕事は脂がのっている時期、しかし悩ましいことも多々ある。
中年に達した主体の溜息や喜びなどが、とてもあたたかい視点で描かれています。
社会との関りというのは、なにも社会問題に取り組むことではなくて、
こうして日常のさまざまから社会に繋がっていくのだとも思う。

「あたたかい」とはどうして思うのか。
しかし、とてもほっこりと、嘆いてはいるけれど
とてもほんわかと、日常がそこにある感じが、
心にしみ込んできました。

装幀には、真田幸治氏によるぶどうの蔓のような、
音符のような素敵なデザインがあしらわれています。
五線譜の上に踊るぶどうの粒粒は、家族が奏でるメロディのようだとも思いました。
楽譜を追って、(ここからは妄想ですが・・・汗↓)
モーツァルトのメヌエット(ニ長調 k355 とか・・)の明るくて清楚な曲を想像しました。
内容とぴったりです。


とてもよい歌集です。
ぜひお読みください。









2017
06.05

現代短歌6月号・特集「自然詠の変容」に

Category: My works
ただいま発売中の「現代短歌」6月号の特集「自然詠の変容」に
「自然詠とフクシマ」という論考を書かせていただきました。




原発事故後、福島の自然は、歌は変容したかというテーマに従って
さまざまに考えてみました。
放射能汚染という不可視な事象は、「見た目では」自然を侵していません。
フレコンパックが山と積まれたり、荒廃した家屋というのは、
それまでを放棄した人間の仕業であるわけです。
掘り返したり・はぎ取ったりという行為が施された自然は、変容を見せていく。

チェルノブイリ原発事故で放棄されたプリピャチの町は、動物が闊歩し、
草木が茂り、人間の立ち入っていなかった、
もともとの自然の姿に回帰していきます。
それは福島の町々でも同じことです。
もちろん、計測すれば汚染があるわけですが、自然はそれを知らないのです。
人間だけが汚染を突然知り、恐れ、放棄することをする。

人災は尾を引き、自然を変えました。
そんなことを書いてみました。
ぜひお読みください。





2017
05.17

5月に思うこと・「わかる」がわかる

Category: 思フコト
『公募ガイド』五月号での特集は
「つぶやくように詠おう・ツイートする短歌」。




巷の公募ファンには有名な雑誌だが、短歌の特集を組むのは珍しい。

巻頭の見出しには「SNSを中心に若いひとたちの間で短歌がブームです」と大きく置く。
「短歌のカジュアル化」を紹介し、
鳥居・木下龍也両氏へのインタビュー、
「ケータイと親和度大」「大学生に短歌ブーム」「ニコニコと月刊『短歌』がコラボ」
「短歌作りキット」「作歌の方法 足し算法と引き算法」など
活況の様子や作歌方法まで、幅広いトピックが並ぶ。

短歌の入り口に立った人も、
迷いなく短歌を親しんでいけるように間口が大きい。 
すなわち、この特集は短歌の作り方がやさしく「わかる」のだ。
わかりやすい作歌方法、わかりやすい歌の発表のしかたが「わかる」特集なのである。

少し前の「わからない歌」論議から、わかること、わかりやすいことの
価値付けがすすんでいるように思える。
『歌壇』でも「わからない歌への対処法」という特集が組まれ、
「わからない」ということに「対処」しなければならない空気が流れている。

しかし、わかる、ことは絶対に必要なのか。
すべてわかったら、逆に「読み」はフラットになるのではないか。
「読み」に幅が出る歌、きちっとある事柄を規定する歌、
どちらも存在してこそ、読み手は楽しみ、歌の世界は深まっていくのではないか。
「わかる」ことがわかる、わかりやすいことが正義、
そんな空気を一表現者として疑う。


2017
04.20

『北冬』17号特集「わたしの気になる沖ななも」

Category: My works
現在発売中の、「北冬」17号の特集:中村幸一責任編集わたしの気になる《沖ななも》
に、沖ななもさんのお歌を挙げて寄稿させて頂いています。

結社「熾」代表の沖ななもさんは、茨城県古河市出身で、
第一歌集『衣装哲学』にて現代歌人協会賞を受賞。
しなやかな強さと、どっしりとした万物にめぐる命を感じる生命観が
溢れる作品を生み出しておられます。

歌人の皆さんが総力ほをあげて、歌三首と1000字という分量で
沖さんを論じるという、とても充実の企画特集です。
リンクはこちら↓↓↓
https://hokutousya.jimdo.com/

ぜひお読み下さい。


2017
04.20

4月から・・

Category: My works
4月から、地元紙「福島民報」の文芸欄、
短歌部門の選者を務めています。

たくさんの歌と出会い、その歌をとおして
暮らしのひとつずつを大切にしている投稿者の皆さまの心を
見る思いがして、大きく心動かされています。

毎週日曜、私も評というかたちでですが、自分の視点から真摯に見つめていきたいと思います。
投稿方法は日曜日の紙面をごらんになってみてください。

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